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読書の記録

山田正紀「雨の恐竜」

雨の恐竜雨の恐竜
山田 正紀

理論社 2007-03
asin:4652086024

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 先生が恐竜に殺された?!先生とわけありの関係だったヒトミは事件を探り始めるが。
 理論社ミステリーYA!第一期配本の一冊。
 ラストに(よくない意味で!)衝撃があって放心してしまうが、1950年生まれの男性作家が、潔癖と打算が目まぐるしく入り交じる14歳の少女をみずみずしく描写してみせたことには素直に驚きたい。
 著者あとがきでカーの「火刑法廷」火刑法廷がどうのと言われたら、そんな古典的名作すら怠惰により読んでいない私には反論する知識もスキルもないわけだが、それでも本書には不満を感じる。
 青春小説としての美点をふまえた上で、敢えてラストには異をとなえたい。ファンタジーはファンタジーなりに世界がきちんと構築されていて、世界のお約束も厳密に出来ているような印象を私は持っている。その基準に照らすと、本書はファンタシィではなく青春幻想小説になるのではないか、と感じる。
 ひょっとして東野圭吾どちらかが彼女を殺したどちらかが彼女を殺したみたいによく読めば真相がわかるのか?どうもそこいらが読んでいてストレスフルなのだった。
キャラの立った3タイプの少女たちを眺めるには良い小説だが、推理小説を期待して読むと、どこかはぐらかされたように思えるのだった。