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読書の記録

永井するみ「欲しい」

欲しい欲しい
永井 するみ

集英社 2006-12
asin:4087748332

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 派遣会社の社長・由希子は別れた夫につきまとわれている登録社員・ありさを心配していた。だが、彼女のお節介が悲劇を生むことに。

 うう、感情移入できる人物がいなくて…。ストーリーとしては、制度の隙をついた着眼点が光るしすいすいよどみなく読める。だが、ちょっと信じがたい不手際もある。たとえば、あの二人はお節介の社長の前でやりすぎた。また、文筆業に就く夢を持っていたあの人物が、モデルにした人物の本名と環境をまんま使うなんてウカツすぎる。ふつうHNを使うのではないだろうか。少しは脚色くらい加えるべきではないか。
 読み終えてみれば、賢い者が愚か者から搾取する、そんな騙し合いの世界だ。結果、ある者たちは敗北し命さえ失い、ある者は束の間の勝利に酔った。勝者もまた次の日には、より聡い者からかっぱがれているかもしれない…そんなことを思った。
 視点が複数移り変わるので、ラストのサプライズがやや減じてしまったか。