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読書の記録

東野圭吾「使命と魂のリミット」

使命と魂のリミット使命と魂のリミット
東野 圭吾

新潮社 2006-12-06
asin:4103031719

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 研修医の夕紀は以前自分の父を執刀しながら救えなかった医師を疑っていた。そんな時、夕紀の勤める病院に脅迫状が届き…。

 医療サスペンスかと思ったら、親子葛藤モノにテロリズムを足した小説だった。医療不信つのる現代に病院へのプラスイメージを打ち出してくれるありがたい物語ではある、だが真面目一徹タイプのキャラしか出て来ないせいか、予想外のことは起こらず物足りないのだ。
 犯人と研修医の2人がからめばもっと盛り上がったと思うが、研修医は手術室に入ってしまえば犯人と連絡がとれない、すなわちからめない。そこで看護師の登場となるわけだが、真面目しか取り柄のない研修医・夕紀と仕事熱心な看護師・望のキャラがかぶるために、少々散漫な印象になった。
 文句は言ったけれど感動的ないい話ではある。ただその善意が実感として受け入れられないのは、凶悪事件や医療ミスが日常茶飯事な世の中にあって、心地よいフィクションを信じられないほど私の心がすさんでいるのであろう。

p.s.昔とった杵柄・重箱つつきコーナー。看護師の自宅アパートにナース服が吊してあるシーン。ふつう女性医療従事者には更衣室があって、脱いだ制服はロッカーに掛けて家に帰る。病院で付くヨゴレは血や膿やら細菌・ウイルス感染が心配なので家庭の洗濯機で洗うなど言語道断。病院のクリーニング窓口に出すのがふつう。家に持ち帰るとなると、買い立て新品の白衣かクリーニング済の白衣を病院構内で受け取り、恋人に見せたいか何かでわざわざ部屋に吊したとしか思えない。さて、どっちなの望さん!?