誉田哲也「月光」
月光 誉田 哲也 徳間書店 2006-11 asin:4198622507 Amazonで詳しく見る |
優しくて自慢の姉が、不良のバイクに轢かれて死んだ。事故死ではなく殺人だと確信した妹は、姉と同じ高校に入ってひとり調査を始めるが。
事故死に見える姉の死の真相を探るため、同じ高校へ進む妹…というのはよくある設定で、最近でも黒田研二「カンニング少女」がそうだった。
メインテーマであるところの真相、美しかった姉が実は…というのもサスペンスにはよくある話で、本書では被害者の悲惨さといったらないわけだが、よくよく考えてみれば本書と同等、いやそれ以上に卑劣で残虐な事件はごろごろ現実に起きているのだった。
私が本書で不満なのは、ヒロインの描写。姉の素敵さ、純潔さがまわりからそう言われるだけで伝わってこないし、肝心の恋愛部分も説得力がない。
羽田といい菅井といい、男どもがやることはやりつつ妙にロマンチストなのもいただけない。
この物語がもっと妹視点であったなら、とも思うが彼女は思考がシンプルに過ぎてトータルな語り手たりえない。ゆえに、甘ったれた男どもの独白に読者は付き合わねばならないわけだ。疲れる読書だった。
p.s.人が人を文字通り傷つけるのは、なかなか大ごとだから、社会病質者でもない彼女がドライバーの衝撃からあっさり立ち直るのには違和感が。