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読書の記録

松尾由美「オランダ水牛の謎」

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小学生・衛の友達アーチーは、謎を説き明かす名探偵。しかし、アーチーは文字通りの『安楽椅子探偵』なのだった。シリーズ第二弾。

日常の謎』系の物語の多くがそうであるように雰囲気は一作目と変わらずのんびりまったり。ただ、オチの無理やり感は増したかな、という印象を受ける。アーチーは奇抜でいながら常識を持った名探偵だが、そのキャラクターの魅力だけでひっぱるのはちょっと苦しいかもしれない。

置き去られていた封筒を持ち帰った衛の好奇心から始まる表題作は、衛同様にキーワードの意味を知らなかったために推理合戦を楽しむことが出来た。だが、封筒に入るサイズの枝で、そんなことが出来るものだろうか。細かいことだが、そこら辺のリアリティが気になった。あと、いくら無害そうな老人であってもそんな真相をスラスラ話すものかしら。

「エジプト猫の謎」
その家族は、何故飼い猫を預けなくてはならなかったのかを、衛・アーチー・芙紗の三人が推理する。
前作もそうだった覚えがあるのだが、私はどうも芙紗が好きじゃないらしい。日常の謎系ミステリーでは、彼女のようにやたら他人の事情に首をつっこむキャラクターがいないと話が進まないものだ。それはわかっているのだが、作中で彼女が思いついた小学生らしからぬ想像が私には不快だった。それが下卑たものだということを彼女もそう反省しているのだけど。

「イギリス雨傘の謎」
密室殺像事件、勃発!?燃える芙紗だが。
悪いけど笑ってしまうな。マンガでも今どきないほどの、ベタと王道のオン・パレードだ。ひょっとして、ギャグのつもりなんですか?イギリスでは降っても霧雨レベルが多いので、あまり傘を持ち歩かないと聞くけれど。

「インド更紗の謎」
インド料理店で奇怪な行動をする男。
私が本書で一番楽しめたのはコレかな。衛の父親の暴走ぶりが愉快。突飛なオチもこれならば爽やかな味わい。

アメリカ珈琲の謎」
衛、大人への階段を一歩上がる。
渦中の人物が小学生相手にそんな大人の個人的事情をペラペラしゃべるものかなあと激しく疑問がわいてきたが、きっとこれも衛を大人扱いしてのことなのだ、だからこそのコーヒーなのだと自分を強引に納得させてみた。

シリーズ次回作があるのなら、今度はもう少し無理めでない真相を期待したい。