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読書の記録

前川梓「ようちゃんの夜」

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ようちゃんがバス停で待っている。夜のバス停に急ぐアサコだが…。


高校生同士の恋とは呼べぬ、友情と言うには風変わりな関係を描く作品。
他のクラスメートと変わらなかったようちゃんがある日特別な存在になり、
アサコは憧れていく。
独特の比喩を使って切ないまでの想いが織られていく様は
新人の作とは思えないほどだ。


幾つかの点で私にはついていけない話だけれど、感性の鋭さには
うならされる。気になったのはまずタバコ。
高校一年女子で、屋上でタバコって今時フツーなんだろうか。
異性交友するなとまでは言わないが、私はそういうのが嫌いなのだ。


そして病んでいる彼女に対しラストがやや安易な印象を受けた。
爽やかで美しくはあるけれど、三十路の読者である私から見ると
都合よく思えてしまうのだ。まあこの辺は好きずきだろうが。


入り込めなかった最大の理由は、私が中学生の頃似たような、
しかしもっと生臭く救いのない体験をしているせいだろう。
私事だが記すと、中学一年生の時、あるクラスメートの女子が
私と友達になってと言って来た。
彼女はまさに塙さんではないようちゃんのようだった。
一方的に彼女にしか見えない友人のことを話し、その友人が
異次元のどこかで死んだのがわかったと言って泣きじゃくり、
前世がどうたらというイッちゃってる話を毎日のように私に聞かせた。


髪を切ったのに気付いてくれない!と彼女は私にヒステリーを
起こしたりもした。
私はアサコより打算的な上に自分が可愛かったので

私はあんたの彼氏じゃない

とウンザリし、彼女と徐々に距離を置くようにした。
すると彼女は担任教師の前で私を指差し
“この人に期待すると裏切られますよ!”など復讐して来たりもした。
セクハラまがいのことまでされた。
高校が別だったのでそこで彼女と縁は切れたが、なぜか彼女とは
ずっと同じクラスだったので中学の三年間暗黒時代であった。


まあこのようなトラウマを抱える私だから本作をフィクションとして
楽しめなかったのだろう。
もちろんようちゃんは私の記憶の中の彼女とは違って節度ある距離を
保ってくれるしもっと儚くピュアな存在だ。
私のようなトラウマを持たない今現在進行形で若者な人、
もすくは十代の少女ね考えを知りたいオトナにオススメしたい。


p.s.彼女の真似は彼氏の前では控えないと、いつかフラれると思う。
この短さだから削ったのだろうが、親がぜんぜん介入してこないのは
ちょっと不思議。あと私的にようちゃんだけ方言だったのが読んでいて
気になった。