読書日記PNU屋

読書の記録

岩井志麻子「黒い朝、白い夜」

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韓国の内縁の夫、ベトナムの妻帯者である愛人、そして新たなる若い男。
男達の間を彷徨いながら満たされぬ自分を静かに見つめる自伝的小説…
なのだろうか。


私はテレビのバラエティをほとんど見ない。
騒がしくて耳の弱い私にはつらい種類の番組だから。
そして写真週刊誌も読まない。
テレビを見ない=芸能人に疎い、ということになり、自然と本当かどうかも
わからない彼らのスキャンダルにも興味が持てなくなるという仕組み。


だから著者の姿を私は知らない。
街で通りがかってもきっとわからないだろう。
そして、この小説に描かれた著者の痛々しいまでの性遍歴が事実なのか
どうかも私にはわからない。
それは多分に乙女ちっくな空想により脚色されているせいもあって、
事実が基になっているとしても、読者が感知出来るのは
著者の脳内で再構成されたコトでしかないからだ。


さきほど著者のことを痛々しいと私は言った。
おこがましいかもしれないが、本書を読んでいてそう感じてしまったのだ。
恋に燃え、楽しくうきうきした時間は過ぎ去っていき、今は停滞した時が漂う。
はたから見たらやめればいいのにとも思うが、男女の仲は傍観者からは
うかがい知れぬものがあるのだろう。