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読書の記録

草野仁「文章探偵」

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小説家の左は作家志望者の集う『ザ・ノベル講座』講師にして
『トパーズ・ミステリ新人賞』の選考委員。
この賞への、或る応募原稿が現実に起きた殺人とそっくりだった
ことから、左は誰が原稿を書いたのか調査に乗り出す。


誰もが怪しい文章ミステリー。
 

草上仁と言えば、私の中ではかなり面白いSF「時間不動産」etc.
をものす作家さんという印象だが、本書が初のミステリー長編だという。
SFちっくな設定はほとんどなく、
現実よりのミステリーであったことにまず驚いた。
 

仕掛けは細かいしネタは大胆だし、驚愕させられる展開もある。
どうしても気になるのはこれが『××できない×り×』の趣向であること。
ミステリーとしてそういう手法は確立しているし、
アンフェアではないのだが、
読後感がスッキリしないのね。そこら辺は好みだろうけど。
 

小説講座のノウハウがちょっぴり(?)明かされていたり、
せちがらい現代に物書きとして生きることの厳しさを説いていたり、
最近の出版業界への苦言がチクリとあったり、
ミステリーのキモ部分以外のところが面白かったように思う。


それは、私が文章や文体へのこだわりをもたないテキトーな人間ゆえに、
本書のトリックが理屈としては理解出来るものの、
感覚的にピンと来ないせいかもしれない。