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読書の記録

辻村深月「ぼくのメジャースプーン」

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 小学生の「ぼく」の親友ふみちゃんは、頭が良くて優しい子だった。
しかし、ある事件が彼女をひどく傷つけてしまう…。
あなたの大切な人が傷つけられた時、加害者に呪いをかけることが
出来るとしたら。ファンタジックな設定を生かして被害者と加害者を描き、
復讐の是非を問うサスペンスフルな小説。
 

いやあこれ、講談社ミステリーランドの一冊でも良かったのじゃないか?
とっくに成人した私でも存分に楽しめたが、主人公と同じ年頃の子供達に
読んでほしい気がする(少々ショッキングなシーンもあるが…)。
 

突然悪意にさらされてしまったら、どうするのか…彼の選択には
驚かされる、けして最善とは思えないけれど、それを選んだ彼の
純真すぎる率直さが、読者の胸を打たずにおかないだろう。
 

そしてこの作品で嬉しいことは、
衝撃作「子どもたちは夜と遊ぶ」オンライン書店ビーケーワン:子どもたちは夜と遊ぶ 上2005.5
の、あの謎が明らかにされているところだ。
気になっていたあの人物のその後が明かされたり、まるで同窓会の趣。
もちろんノン・シリーズとして本書を単独で楽しむことも可能だが、
「子どもたちは〜」を先に読んでおく方が二倍おいしいのでオススメ。


p.s.思えばデビュー作「冷たい校舎の時は止まる」オンライン書店ビーケーワン:冷たい校舎の時は止まる 上2004.6
で超常的設定と卓越したリーダビリティから恩田陸と比較された
著者だが、不思議な能力を生々しく現実的な事件に絡めた本作は
恩田陸「常野物語」シリーズオンライン書店ビーケーワン:光の帝国2000.9
にも似たムード。ただし既存の常野シリーズにそっくりなのではなく、
あくまで常野シリーズの新作と言われたら信じてしまいそうなほどの、
素敵な不思議感覚とでも言うのか…。一旦完結したかに思われた物語が、
時と舞台を変えて続き、つながっていくのも恩田チックかもしれない。
 

著者らしいラストの爽快なまでのサプライズは健在で、私はこの衝撃を
味わいたいがためにこの著者の本を読み続けるのだろうと思った。