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読書の記録

文・巖谷國士作品桑原弘明「スコープ少年の不思議な旅」

スコープ少年の不思議な旅
桑原 弘明作品 / 巌谷 国士文
パロル舎 (2005.12)
ISBN:4894190486
価格 : \1,785

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手のひらに乗るほど小さな箱の中に広がる無限の世界。
写真とイメージ文からなる作品集。
私は最初勘違いしていて、これらは現実の風景を魚眼レンズを通して
撮影したのだと思っていた。読んで驚いたのだが、この迫真に迫った風景は、
人の手によって造られたものだというのだ。
なんだろう、このリアリティは?!しかもスコープの、光を照らす窓を変える
と見える世界は昼から夜になったりするのだ。それも単純な昼夜だけではなく、
まだ霞がかった朝や、紅美しい夕暮れ時までが表現可能だったりする。
 
こんな小さな箱が、世界を内包するなんて。素敵だ。
それはミニチュアのジオラマや箱庭に似ていなくもないが、
箱の中に介入出来ず覗きこみ眺めるだけである分、
世界への焦燥感にも似た憧憬は箱庭の比ではない。
ただの箱としても充分鑑賞に耐えるほど美しいというのに、
光によって時間の流れる世界が閉じ込められているなんて、
スコープの魅力には抗しがたい!巻末の椅子のなんとまあ小さきことよ。
続編を熱望するとともに、次回個展が開かれたら、ぜひとも
駆けつけたいと決意した。