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読書の記録

三並夏「平成マシンガンズ」

平成マシンガンズ
三並 夏著
河出書房新社 (2005.11)
ISBN:430901738X
価格 :1,050円
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家庭では親が離婚の危機、父はケバい愛人を連れ込んで、
学校ではイジメが始まった。
そんな「あたし」の夢には死神が現れる…。

著者執筆時の年齢が15歳ということを考えると、驚くべき作品。
勢いと力のある文章に惹きつけられた。大人の醜さを嫌悪しながら、
金銭的にたよらざるを得ない子供。ヒロインは望まずして世の中の矛盾、
不条理に巻き込まれていき、そのゆがみを認識しつつも子供であるが
ゆえに手の打ちようがない。間違ったことへの憤りと、対処出来ぬ
自分へのもどかしさが嵐となって吹き荒れている。
 
文学とはそういうものなのかもしれないが、オチがあるようでなく
(ないようで、あるのだろうか?)後半パンチが弱い気がしたが、
次回作に期待したい作家であると思う。
 
ただ、テーマはありふれたもの。それを特別なものと感じあらわす
ところが繊細な感性と言うべきか。この作品自体は(年齢を考えたら)
パワフルで魅力的なのだけれど、近年の若い作家の小説…
綿矢りさ蹴りたい背中オンライン書店ビーケーワン:蹴りたい背中2003.8、

白岩玄野ブタ。をプロデュースオンライン書店ビーケーワン:野ブタ。をプロデュース2004.11

でもそうだったのだが、自分は賢くレベルが高いと信じる主人公が、
周囲の愚民どもを演技でやり過ごす…そのような肥大化したエゴを
もてあまし苦しむ小説は、もうとっくにオトナになってしまった自分には、
どうも用事が無いようだ。ちょっと自分語りをすると…
私はここにあるような精神攻撃系から、オールドタイプな直接暴力系まで
様々なイジメをやり過ごして来たが、書物と学業に逃避し、
一度『変人』の称号を得てしまえば学校はラクなモノであった。
人と合わせるのが苦痛なので投げだし、お友達は本と家の犬のみ。
学業さえ抜きんでてしまえば、先生の覚えもめでたくなるというもの。
昔はそれで生きていくことが出来たのだが、
今時のコたちはその抜け道もゆるされないんだろうか。
今はそんなに生きにくいのか…。
 
それゆえヒロインに感情移入しかねるところもあったのだが、
本書は同時代・同世代の人にこそ価値有る小説なのかもしれない。
もしくは、今時の若者が何を考えているのか知りたい大人には
興味深い読書体験となるだろう。