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読書の記録

朱川湊人「わくらば日記」

 
オンライン書店ビーケーワン:わくらば日記2005.12角川書店\1,470

ワッコの素敵な姉さまは、病弱ながら不思議な能力を持っていた。
ミステリアス連作集。‘わくらば’は‘病葉’のこと。
「追憶の虹」「夏空の梯子」「いつか夕陽の中で」「流星のまたたき」
「春の悪魔」を収録。
 
装丁が西岸良平三丁目の夕日」を彷彿とさせるような夕焼け色、
カバーを取るとセピア色というノスタルジー極めたデザイン。
 
ミステリーというには謎があっさりめ、道徳の教科書のようにいい話
ばかりである。たとえると吉野源三郎君たちはどう生きるか
っぽくもある。
いい話なのだが、だいたいそういう真相なのでは…という予想通りに物事が
運んでいくため、それまでの朱川ホラーに見られたような、
強く心ゆさぶるパンチ力は見られない。叙情的な作品を期待して読むなら、
悪くないのかも…(狙いは泣けるホラーか?!)。
 
ただ、主人公の家がなぜ上流風を気取っているのかとか、刑事たちが
(キャラは良いのだが!)あまり機能していなかったり、不満点もある。
そして最大の不満は、続きを思わせるような閉じ方であることだ。
ほのめかされたまま、語られずに終わることのなんと多いことか。
続刊は果たしてあるのだろうか?それならば一応読んでみたくも思うが…
エキサイティングな本が好きな私には、やや大人しすぎる印象の本
であった。雑誌連載ゆえ仕方ないところもあるが、毎回毎回姉さまの末期を
語るのも食傷気味になった。

p.s.すごく良いおはなしなんだけどね?既刊に比べて“不思議度”が
低いのが私には気に入らないようだ。サプライズも少ないしなぁ…
神楽刑事の名前が本書から受けた一番のサプライズだったが。