読書日記PNU屋

読書の記録

市川拓司「世界中が雨だったら」

オンライン書店ビーケーワン:世界中が雨だったら2005.6新潮社\1,365


琥珀の中に」美貌の同級生が急に太り始めた。
そんな彼女が、冴えない自分に告白してきて…。
思春期の甘酸っぱくもたどたどしい恋が行き着く先は…。
なんとすさまじい話だろうか。
「いま、会いにいきます」「そのときは彼によろしく」とは作風を
ガラリと変えて、本作はほんのりノワールの薫りただよう。
「弘海」でちょっぴりイイ子ちゃん物語に食傷気味だった私には
楽しめたが、いつもの市川小説を期待して読むとびっくりしてしまう
だろう。ホラー大好きな私には実はコレが一番好みであった。
女性の怖さがリアルなところ、
そして良心の痛みを性行為で塗りつぶしていくすさまじさに打たれた。
見る人によって世界の色が塗り変わるところがショッキングで好きだ。
 
「世界中が雨だったら」今夜世界にさよならを…
弟の様子に胸騒ぎをおぼえる姉だが。
これはちょっぴりいい話系。悲しい話でもある。ラストがいかにも
創作っぽいのが興ざめではあるが、従来の市川“泣かせ”路線に
いちばん本書で近いのはコレだろう。
 
「循環不安」恋人紹介でついに理想の相手に巡り会った男。
しかし彼には悩みがあった。
これはもう、ギャグだね。大石圭のエゴイストホラーに似ている。
この主人公がほんとバカでバカでねぇ…近い将来自滅すると見た。

p.s.新堂冬樹小川勝己と並んで市川拓司が鬼畜系小説家として
知られる日も近いかも?