読書日記PNU屋

読書の記録

森博嗣「工学部・水柿助教授の解脱」

工学部・水柿助教授の解脱工学部・水柿助教授の解脱
森 博嗣

幻冬舎 2008-04
asin:4344014928

Amazonで詳しく見る

 小説家として巨万の富を得た水柿助教授は、引退を視野に入れつつ子犬を飼うのだった。似非エッセイ風小説シリーズ。
 ううむ、私はかつてこのシリーズが面白いなあと思っていて読むのを楽しみにしていたのだけれど、どういうわけか面白さを感じられなかったのであった。今回は物欲のない夫婦が貯金がありすぎ使い途がなくて困る、というワーキングプアな私にワレケンカ売っとんのか、な内容が繰り返され、本が好きなら私設図書館を建てればよいではないか、犬猫が好きなら保健所から処分間近な生き物を引き取り里親募集保護センターを建てればいいんじゃね、そんな億単位で金が余っとんなら寄付すりゃええやん、などとブルーカラーには非常に腹が立つ内容なのだった。
 主人公夫婦がどうにもナルシスティックなのも鼻につくし、そういう作風とはいえ些末な事どもを異様なまでに描写してみたり、寒い駄洒落を粘着質に連発してみたりとさすがは読者を怒らせるために書かれた実験小説! と感じ入る次第。
 ラストにブットビ★サプライズが用意されているものの、ここまで何度も投げ捨てたい誘惑に打ち勝ってきた忍耐に比してはご褒美に見合わないオチであることよ。

↓コチラは好きだったんだがなあ。↓
工学部・水柿助教授の日常 (幻冬舎文庫) 工学部・水柿助教授の逡巡―The Hesitation of Dr.Mizukaki (幻冬舎文庫 も 3-8)