読書日記PNU屋

読書の記録

宮部みゆき「楽園」上・下

楽園 上 (1)楽園 上 (1)
宮部 みゆき

文藝春秋 2007-08
asin:4163262407

Amazonで詳しく見る

楽園 下楽園 下
宮部 みゆき

文藝春秋 2007-08
asin:4163263608

Amazonで詳しく見る


 フリーライター前畑滋子は、夭逝した少年の謎を追ううち、親による子殺し事件にたどりつく。複雑に絡み合う運命の糸を滋子は解き明かせるか。

 あっしまった、この作品のヒロインは「模倣犯模倣犯1 (新潮文庫)で活躍した人なのであった。あちらを未読なのに、こちらから先に読んでしまったよ。独立した事件ではあるがヒロインの周辺にたびたび前作が影を落としているので、順番に読むのがやはり理想だろう。
 ヒロイン夫婦のキャラもいいし、好感が持てるのだが、なぜか満足感があまりない。ヒロインと共に他人の悲惨な過去を暴く体験に疲労するせいだろうか。
暗い物語に光を当てるのはヒロインのダンナと依頼者の敏子たちで、彼らのような善人はすごく生き生きとしているのだが、悪人はステレオタイプだし、理解不能な鬼畜として描かれているのがやや不満。
 そして×能力を肯定的に扱ったところに驚いた。一歩間違えれば、サスペンスミステリーにおけるこういった設定は、安易な手抜きや荒唐無稽にとられやすいものだ。本書にしてもこのスーパーナチュラルな設定が巧く機能したとは言い難く、コレ抜きで物語は成立しなかったものかとしばし考えてしまった。