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読書の記録

渡辺容子「魔性」

魔性魔性
渡辺 容子

双葉社 2006-11
asin:4575235679

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 J2のサッカーチーム・川崎トラヴィアータを応援する友人が殺された!ひきこもりの元OL・珠世は素人探偵を始めるが…。

 サッカーのサポーターを中心にしたミステリーがあると聞き、読んでみた。用語の表記が「オフ・サイド」ではなく「オフサイド」だろう中黒はいらないだろう、とか、試合中に試合観戦を放り出して推理談議とは、あんたらホントのサポちゃうんちゃう、とか色々ツッコミどころはあるけれど、まあまあ楽しんだ。テレビのサスペンスドラマ的という意味では。
 次から次へと一風変わった人物が出てくるので退屈はしないが、解決部分への導入が唐突な印象が否めない。美形や×性×など趣味性全開な展開も好き嫌いが分かれそうなところである。
 この物語自体が殺人の犯人当て以外に、ヒロインの成長物語にもなっているのだが、ヒロインがどうにもこうにも。風呂に3日も入らないようなひきこもりでプーの女性を、同じマンションに住んでいるというだけの理由であれこれ世話をやくなんてことがあるだろうか。まずありえない。襟を立てているから勃起だなどとはしゃぐセンスはもっとありえない。読んでいてドン引きなのだが。
一番自分が受け入れられなかったのがヒロインの親子関係。ゲシュタポのように恐怖統治で育てられた子が、あのようなラストを迎えることが信じがたい。なんとなくつっぱってるとか、理由なき反抗でないのならなおさらである。ネグレクトだけが虐待ではない。過干渉によって、子の自信を失わせ精神を腐蝕させていくのも虐待である。私はそんな家庭の出だからこそ思うが、ヒロインがそんな理由で優しくなれたのなら、元々甘ったれていただけなんだろう。