読書日記PNU屋

読書の記録

井上雅彦「燦めく闇」

オンライン書店ビーケーワン:燦めく闇2005.3光文社\2,415


著者自選傑作集、なのである。「赤とグリーンの夜」「舞踏会、西へ」
「十月の映画館 」「鞍」「白い雪姫」「海の蝙蝠」「ボンボン」
「沈鐘」「クリープ・ショウ」「青頭巾の森」「化身遊戯」「火蜥蜴」
「北へ深夜特急」を収録。
 
なんとおぞましく美しく、甘美で華麗な本が出たものだろうか。
闇色のシックな装丁がさらに内容をひきたてて素敵だ。
 
収録作の多くは「異形コレクション」に発表されたものなのだが、
これがどれも粒ぞろいで素晴らしい。まさに珠玉の傑作集と
言えよう。作中から立ち上る甘い腐臭に酔わされ、また残酷な描写
には、目をそむけたいのに奇妙な魅力で惹きつけられて釘付けであった。
あまりにも、美しすぎて。畏怖の気持ちを通り越して、
取り返しのつかぬ地平まで、行ってみたくなってしまうほど
ではないか。
 
まったくすごい本が出たものだ。素晴らしい作家がおられるものだ。
津原泰水「綺譚集」
オンライン書店ビーケーワン:綺譚集2004.8集英社\1,785
にもうならされたものだが、本書も怪奇幻想好きならば必読の書と
言えよう。
私は、超絶ヴォリュームである「異形コレクション」シリーズには
怖じ気づいて手を出していなかったが、これからは読まねば!と
決意させられたのだった。